年初来高値(3万0670円)9月14日からの日経平均の下落率は約10%に達し、株価の下落が岸田内閣発足後も止まりません。
岸田新内閣の打ち出したアベノミクス修正とはその内容は?最近の株価下落は偶然といえるのでしょうか?
恒大集団のデフォルト懸念など、世界で起こっている下落要因を差し引いて、岸田新内閣に対する証券市場の真の評価を見てゆきます。

目次
アベノミクス修正とは内容は?
岸田新首相が唱えるアベノミクス修正とはどのような内容なのでしょう?
岸田首相は、アベノミクスは「中間層への恩恵不十分だった」として、格差を是正して中間層を拡大し、新たな成長につなげると、アベノミクス修正を強く打ち出しています。
その内容を具体的に見てゆきましょう。
岸田首相の経済政策の考えは次のようなものです。
・富裕層や大企業が豊かになれば、恩恵が低所得層や中小企業に波及する「トリクルダウン」が、アベノミクスでは不十分だった。
・小泉改革以降の新自由主義的政策を転換し、従来の規制改革・構造改革路線から脱却し、子育て世帯や中小企業への分配を手厚くする経済政策にかじを切り、成長と分配の好循環によって格差是正を目指す。
・格差を是正して中間層を拡大し、新たな成長につなげる。
これまでとの大きな違いは、「分配」というのがキーワードとなっている点です。
アベノミクス修正の5つの内容
1. 子育て世帯の教育費・住居費の支援強化
2. 看護師や介護福祉士、保育士らの所得引き上げ
3. 大企業が強い立場を利用して納入業者に負担を強いる「下請けいじめ」の監視強化
4. 高所得者層への課税適正化や企業に賃上げを促すための税制優遇策など
5. 金融所得課税の見直し
株式の売却益や配当への金融所得課税の強化、例えば、一律20%の税率を引き上げて税収を増やし、中間層や低所得者に配分する
これらにより、「令和版所得倍増」の実現に向けて進む。

アベノミクス修正報道で株価下落は偶然?
9月14日以降、世界経済に悪影響を及ぼし、株価を下落させる要因がいくつもありました。
・中国大手不動産開発会社の恒大集団の債務不履行懸念
・米債務上限問題、
・米国長期金利上昇
・中国国内の電力不足問題
・世界的な原材料供給不足による企業業績圧迫
・原油価格の高どまり
それゆえ、日本の株価の下落に対する岸田政権のアベノミクス修正がどの程度寄与しているかを切り分けるため、この間のNYダウと比較して、考えます。
9月14日~10月5日までの日経平均とNYダウ(日本時間)の変動を次の表にまとめました。
また、9月14日の株価を1としたときのその後の下落率を求めました。
日付 | 日経平均終値(円) | 下落率 | NYダウ終値(ドル) | 下落率 |
---|---|---|---|---|
9月14日 | 30670.1 | 100.00% | 34869.63 | 100.00% |
9月15日 | 30511.71 | 99.48% | 34577.57 | 99.16% |
9月16日 | 30323.34 | 98.87% | 34814.39 | 99.84% |
9月17日 | 30500.05 | 99.45% | 34751.32 | 99.66% |
9月18日 | 34584.88 | 99.18% | ||
9月21日 | 29839.71 | 97.29% | 33970.47 | 97.42% |
9月22日 | 29639.4 | 96.64% | 33919.84 | 97.28% |
9月23日 | 34258.32 | 98.25% | ||
9月24日 | 30248.81 | 98.63% | 34764.82 | 99.70% |
9月25日 | 34798 | 99.79% | ||
9月27日 | 30240.06 | 98.60% | ||
9月28日 | 30183.96 | 98.41% | 34869.37 | 100.00% |
9月29日 | 29544.29 | 96.33% | 34299.99 | 98.37% |
9月30日 | 29452.66 | 96.03% | 34390.72 | 98.63% |
10月1日 | 28771.07 | 93.81% | 33843.92 | 97.06% |
10月2日 | 34326.46 | 98.44% | ||
10月4日 | 28444.89 | 92.74% | ||
10月5日 | 27822.12 | 90.71% | 34002.92 | 97.51% |
日経平均は、ほぼ一貫して下落し、10月5日には、90.71%と10%近く落ちています。一方NYダウは10月1日に最安値97.06%を記録しているものの、10月5日には、97.51%と精々3%以内の下落にとどまっています。
単純に考えますと、この差にアベノミクス修正を懸念した市場の意思が反映されている可能性があります。
では総裁選を挟んで、新内閣発足までのどんな出来事が、株価を押し下げたのか時系列でみてみましょう。
月日 | 日経平均終値 | 下落率 | 出来事 |
---|---|---|---|
9月14日 | 30670.1 | 100% | 年初来最高値記録 |
9月17日 | 30500.05 | 99.4% | 総裁選告示 |
9月26日 | 30240.06 | 98.9% | 決選投票の見通し、岸田氏優勢 |
9月29日 | 29544.29 | 96.3% | 決選投票で、岸田氏新総裁に選出 |
10月1日 | 28771.07 | 93.8% | 新執行部発足 |
10月4日 | 28444.89 | 92.7% | 岸田内閣発足 |
10月5日 | 27822.12 | 90.7% | 内閣本格始動も一時900円超安 |
9月3日に菅総理が、総裁選に出馬しないことを表明し、29,000円を割っていた日経平均株価は、新内閣への期待から、河野太郎行革相の総裁選出馬表明(9月11日)を経て、9月14日に、年初来最高値の30670.1にまで、上昇しました。
当初の河野太郎氏優勢から、9月17日の4候補者による総裁選出馬公示で、決選投票の可能性が高まります。
9月26日には、党員票は河野太郎氏が6割程度獲得し、1位となるも、国会議員票が、岸田文夫氏3割台、河野太郎氏2割台後半、高市早苗氏2割強となる予想で、過半数に達せず、1位と2位の決選投票になると予想され、岸田氏優勢との予想がでました。
そして9月29日の総裁選での岸田氏選出を経て、10月1日の新執行部発足で甘利氏の幹事長就任など、派閥に配慮した人事や、総裁選で敗れた河野氏の冷遇などが明らかとなりました。
これが、新内閣は改革など変化に乏しいのではとの疑念を抱かせました。
そして、10月4日の新内閣発足でも、新人登用など、新鮮さは、一部見せたものの、市場の評価にはつながらなかったようです。
市場は、岸田首相が新自由主義的政策を転換すると明言しており、アベノミクスでは分配が不十分で、中間層が育たなかった、その分配の財源として、高所得者層への課税適正化や、金融所得課税の強化を具体策としてあげている点に懸念を示したのだと推測されます。
海外の投資家勢は、規制改革などで政治を刷新するイメージが強かった河野太郎氏への期待で買いを積み上げていましたが、岸田新政権の改革の取り組みに物足りなさを感じている点と金融所得課税の見直し懸念から売りに回っていると言われています。
岸田内閣の金融政策は、これまでの金融緩和を引き継ぐとは言っていますが、政策転換により今後どのような影響がでるか心配な点は多々あります。

アベノミクス修正に関するSNSの反応



岸田に決まってから、日経一日たりとも上がってないわ。岸田政権売られまくり。
国民の意識がようやく投資に向いてきたのに。一時の歳入確保のために経済を回らなくする愚策でしかない。


出典:ヤフコメ

まとめ
要約すると...
- 富裕層や大企業が豊かになれば、恩恵が低所得層や中小企業に波及するというアベノミクスは不十分だったとして、格差を是正して中間層を拡大し、新たな成長につなげるように修正する
- 岸田新内閣に至る10%株価下落の要因の海外要因は3割以下と推定される
- アベノミクスに大きな問題があることを認めつつ、全体のパイを増すことなく、広く分配することで、経済成長が可能なのかとの疑問の声が多い

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