東京オリンピックの年の政治

メルケル首相はなぜ人気取り戻した?コロナ演説全文から分かるその凄さ

感染拡大を阻止できなかった欧米にあって、唯一ドイツが医療崩壊を防ぎ、致死率を約2%に抑えこんでいます。
これはトップのリーダーシップによるといわれています。

政界引退を表明して、求心力を失っていたといわれるメルケル首相がここに至ってなぜ人気を取り戻したのでしょう? 3月18日のテレビでの国民へ真摯に訴えるコロナ演説全文からその凄さを探ってゆきましょう。
英語字幕付き動画も掲載しました。

ひまり
世界中で話題になってるものね!

メルケル首相はなぜ人気取り戻した?

メルケル首相はなぜ人気を取り戻したのでしょう?

1954年7月17日生まれ、65歳のメルケル首相には、他のリーダーにはないいくつかの特徴があります。

メルケル首相の特徴

1. ドイツ統一前の旧東ドイツで育ち、自由に行き来できないつらさを体験をもって知っている。
2. 旧東ドイツのカールマルクス・ライプツィヒ大学(現ライプツィヒ大学)に入学し、理論物理学を専攻し、東ベルリンにある科学アカデミーに就職し、理論物理学を研究した科学者である。博士号を取得している。
3.  ベルリンの壁崩壊後、縁のなかった政界に進出し、CDU(キリスト教民主同盟)に入党。CDU党首を経て、2005年ドイツ初の女性首相に就任し、以後EUの中心国としてEU全体を引っ張ってきた。

首相4期目の2018年州議会議員選挙でCDUが連敗したため、12月の党首選挙には出馬せず、首相も、2021年の任期限りとして、政界を引退することを表明し、以降求心力は落ちていました。

今回のコロナ問題が持ち上がると、
3月11日にベルリンで開いた記者会見の冒頭、「新型コロナウイルスに対するワクチンも存在せず、治療法さえない中で、専門家は国民のうち最大で60~70%が感染すると見ています」とインパクトある発言で国民にショックを与えました。

そして、3月18日の国民に呼びかけるテレビ演説です。

テレビ演説のポイント

1.コロナ感染状況の厳しさ
「東西ドイツ統一以来、いや第二次世界大戦以来の試練だ」
2. 施策の目的
「ワクチンが開発されるまで感染拡大の速度を遅くする」ために国民生活にさまざまな制限をかける。
3. 国民への具体的行動への呼びかけ
「他者との接触」を減らすことが戦いのポイントである。

これを自分の経験を含めて、真摯に、論理的に感情をこめて訴えかけ、国民を納得させたと思われます。

ここで、日本とドイツのコロナ感染と対策の現状を見ておきましょう。


ドイツ日本
感染者数
118,2355,553
死亡者
2,607108
致死率2.2%1.9%
回復者数52,407685
総検査数132,000,00064,387
検査数(1000人当たり)
15.970.51

特に感染が爆発した欧州各国とドイツの差が大きいのが致死率で、イタリア12.7%、イギリス11.7%に比べて2.2%と抑え込んでいます。
これが、メルケル首相率いるドイツの現状です。

日本はこれからが真価を問われる時期となります。

日本はどこまで準備できているのだろう?
れん

メルケル首相のコロナ演説全文


(英語字幕付き)

親愛なる国民の皆さん、
コロナウイルスは現在わが国の生活を劇的に変化させています。私たちの日常や公的生活、社会的な付き合いについての我々の考え ― こうしたものすべてがかつてないほど試されています。

あなたたち何百万人が出勤できず、子どもたちは学校や保育所に行けず、劇場や映画館や店は閉まっています。そして最も厳しいことはおそらく、こんなことがなければ当たり前の触れ合いがなくなっているということでしょう。もちろんこのような状況では、私たち個々が、これからどうなるのか疑問や心配でいっぱいです。

私は今日このような普通とは異なったやりかたで皆様に話しかけています。それは、この状況で連邦首相としての私を、そして連邦政府の同僚たちを何が導いているのかを皆様にお話ししたいからです。これは開かれた民主主義の一環です。即ち、私たちが政治的決断を透明なものとし、それらを説明します。皆さんの理解が得られるように、私たちの行動が正当である理由付けをできる限り示し、それをお伝えします。

もし、すべての市民がこの課題を自分自身の課題として理解すれば、我々はこれをやり遂げられると私は固く信じています。このため次のことを言わせてください。事態は深刻です。あなたも真剣に考えてください。東西ドイツ統一以来、いいえ、第二次世界大戦以来、これほど市民による共通の連帯が重要になるような課題の挑戦をわが国が受けたことはありませんでした。

私はここで、現在のエピデミックの状況、連邦政府および州レベルでがわが国のコミュニティのすべての人を保護し、経済的、社会的、文化的な被害を抑えるために何をしているかを説明したいと思います。さらに、私は、あなたがたがそれを必要としている理由と、あなたたちそれぞれのすべての人がなにに貢献をできるかについてもお示ししたいと思います。

エピデミックについてはー私がここで言うことはすべて、連邦政府とロバート・コッホ研究所の専門家やその他の科学者およびウイルス学者との継続しておこなわれている審議から得られた見解です。世界中で強いプレッシャーの元で研究が進められていますが、コロナウイルスに対する治療法もワクチンもまだありません。

このような場合、できることは、ただ一つであり、これがすべての私たちの行動の指針となります。すなわち、ウイルスの拡散スピードを緩和し、数か月にわたって引き延ばし、時間を稼ぐことです。研究者が治療薬とワクチンを開発するための時間です。また、とりわけ発症した人ができる限りベストな条件で治療を受けられるようにするための時間となります。

ドイツは素晴らしい医療システムを持っています。世界でベストのひとつかもしれません。そのことが私たちに希望を与えています。しかし、わが国の病院も、コロナ感染の症状がひどい患者がごく短期間にあまりに多く入院したとすると、完全に許容量を超えてしまうことでしょう。

これは単なる統計上の抽象的な数字の話ではなく、父、祖父、母、祖母、配偶者、つまりすべての人たちのことです。そして私たちは、どの命もどの人も大事にするコミュニティです。

私は、この機会にまず、医師、看護サービスまたはヘルスケアシステムやその他の機能でわが国の病院を始めとする医療施設で働いている方すべの方々に言葉を贈りたいと思います。あなた方は私たちのためにこの戦いの最前線に立っています。あなた方は最初に病人を、そして、感染の経過が場合によってどれだけ厳しいものかを目の当たりにしています。

そして毎日改めて仕事に向かい、そこで人のために尽くしています。あなた方の仕事は途方もないものです。そのことに私は心から感謝します。

従って、重要なのは、ドイツ国内のウイルスの拡散速度を低下させることです。そして、1つのことに頼らなければなりません。それは、極めて実際的なことです。公的生活を可能な限り停止することです。もちろん理性と判断力を持ってです。国は引き続き機能し、もちろん供給も引き続き確保されるからです。できる限り多くの経済活動を維持したいと思っています。

しかし、人々を危険にさらす可能性のあるものすべて、個人を、また共同体に害を与える可能性のあるものすべてを減らさねばなりません。

人から人への感染リスクを可能な限り制限しなければなりません。

すでに現在でも制限が劇的であることは分かっています。イベント、見本市、コンサートは中止、当面学校も大学も保育所も閉鎖され、遊び場での遊びも禁止です。

連邦政府と各州により合意されたこれらの閉鎖が、私たちの生活に、そして民主主義的なセルフイメージにどれだけ厳しく影響するか、私は承知しています。わが連邦共和国でこうした制限はいまだかつて経験したことはありません。

私はあなた方に保証します。旅行および移動の自由が苦労して勝ち取った権利であるということを知っている私のようなものにとっては、このような制限は絶対的に必要な場合のみ正当化されるものです。そうしたことは民主主義社会において決して軽々しく、例え一時的であっても決められるべきではありません。しかし、それは今、命を救うために不可欠なのです。

このため、週の初め以降、国境検査の厳格化と最も重要な隣国諸国への入国制限令が施行されています。

大企業のビジネスや、中小企業、商店、レストラン、フリーランサーのスモールビジネスにとって、すでに非常に困難となっています。

次の数週間はいっそう困難となるでしょう。連邦政府は、経済的影響を緩和し、とりわけ雇用を守るために可能なことをすべて行うことを、私は皆さんに約束します。

わが国の経営者も被雇用者もこの困難な試練を乗り越えられるように手助けするために、連邦政府は、必要なものをすべて投入することができ、またそれを用いる予定です。

また、皆さんは、食料品供給が常に確保されること、たとえ1日棚が空になったとしても補充されること信じて安心してください。スーパーに行くすべての方にお伝えしたいのですが、備蓄するのは意味があります。それは意味のあるものでした。けれども限度があります。何かがもう二度と入手できないかのような買い占めは無意味で、結局のところ完全に不健全です。

ここで、普段滅多に感謝されることのない方たちにもお礼を言わせてください。このような状況下で日々スーパーのレジに座っている方、商品棚を補充している方は、現在ある中でも最も困難な仕事のひとつを担っています。同胞のために尽力し、言葉通りの意味で店の営業を続けてくださり感謝します。

さて、今日私にとって最も緊急性の高いものについて申し上げます。私たちがウイルスの速すぎる拡散を阻止する効果的な手段を投入しなければ、あらゆる国の対策が無駄になってしまうでしょう。それは私たち自身です。私たちの誰もが無差別にウイルスにかかる可能性があり、今誰もが助け合う必要があります。まず、第一の助け合いは、今日何が重要なのかについて真剣に考えることです。パニックに陥らず、しかし、自分にはあまり関係がないなどと一瞬たりとも考えないことです。不要な人など誰もいません。私たち全員の力が必要なのです。

エピデミックは私たちに教えます:私たち皆がどれだけ脆弱であるか、どれだけ他の人の思いやりのある行動に依存しているか、それゆえ、どれだけ一緒に行動することでお互いを守り、力づけることができるかということです。

一人一人にかかっています。私たちは、ウイルスの拡散をただ受け入れる運命であるはずはありません。私たちには対抗手段があります。すなわち、お互いに配慮して距離を保つことです

ウイルス学者の助言は明確です。特に握手は避ける、頻繁によく手を洗う、最低でも1.5メートル隣の人との距離を取る、そしてお年寄りは特にリスクが高いのでほとんど接触しないのが理想的ということです。

こうした要求がどれだけ難しいことか私は分かっています。特に困難な時こそお互いに近くにいたいと思うものです。私たちは身体的な近さやスキンシップで癒されることを理解しています。けれども、不幸なことに今はその反対が正しいのです。これはみんなが本当に理解しなければなりません。今は、距離だけがケアの表現となるのです。

よかれと思ってする訪問や、する必要のない旅行、こうしたことすべてが感染を拡大することがあるため、現在は本当に控えるべきです。専門家がこう言うのには理由があります:祖父祖母と孫は、今は一緒にいてはいけない。

不必要な接触を避けることで、病院で日々増え続ける感染者の世話をしているすべての方々を助けることになります。これが命を救うのです。多くの人にとってこれは困難なことでしょう。誰も一人にしないこと、励ましと信頼が必要な方たちをケアすることも重要になってきます。私たちは家族として、また社会として別の形の相互扶助の方法を見つけるでしょう。

今でもすでに、ウイルスとその社会的影響に対抗する創造的な形態が出てきています。すでに、祖父、祖母が孤独にならないようにポッドキャストをする孫たちがいます。

私たちは皆、愛情と友情を示す別の方法を見つけなければなりません。スカイプや電話、eメール、あるいはまた手紙を書くなど。郵便は配達されますので。自分で買い物に行けないお年寄りのための隣人の助け合いの素晴らしい例を聞いています。コミュニティとしてまだまだ多くの可能性があると私は信じています。私たちがお互いを孤立させないことを示しましょう。

皆さんに訴えます。今後適用されるルールを守ってください。政府として、私たちは何が修正しうるか、また、何がさらに必要なのかについても常に検討します。

状況は流動的で、私たちはその中で学習しつづけ、いつでも再考して、他の手段で対応できるようにします。その際はそれも説明します。このため、皆さんにお願いします。噂を信じないでください。多くの言語にも翻訳されて発表される公式メッセージのみを信じてください。

私たちは民主主義社会です。私たちは強制ではなく、知識の共有と参加することによって生きています。これは歴史的な課題であり、一緒に力を合わせることでしか達成できません。

私たちがこの危機を乗り越えられるということを、私はまったく確信しています。けれども、犠牲者がどれだけ出るのか。どれだけ多くの愛する人たちを失うことになるのか。それは多くが私たち自身の手にかかっています。私たちは今、断固として、一致団結して対応できます。現在の制約を受け入れ、お互いにじっとしていることができます。

この状況は深刻であり、まだどうなるかわかりません。すなわち、個々がどのように規則を守って実行するかということに、事態が左右されるということです。

一度もこのようなことを経験したことがなくても、私たちは、思いやりを持って賢く行動し、それによって命を救うことを示す必要があります。例外なく、それは、個々、つまり私たち全員にかかっています。

あなた自身とあなたの愛するひとを大切にしてください。ありがとう。

ひまり
誠実さ真摯さが伝わる!

メルケル首相のコロナ演説への海外の反応

ドイツ国民に対するメルケル首相のスピーチは、理性的で思いやりのあるリーダーシップの例です。他の指導者との対照ははっきりしています。
自由世界の女性リーダーたちのスピーチで鼓舞されるのは、アンジェラ・メルケル、ジャシンダ・アーダーン(NZ)、エリザベス女王です。オープンで直接的、そして誠実に人々とのコミュニケーションをとって、見事なリーダーシップを発揮。
ドイツがコロナに取り組む準備ができた方法を調べてください、彼らは同じ時期に知らされました。 3月の初めのテレビでのメルケルの演説を見てください。その時、ボリス(英)、ボルソナロ(ブラジル)、トランプはまったく異なる見解を持っていた。
メルケル首相は昨日、国民に語りかけた。
メッセージ、その配信および内容は、ジョンソンおよびトランプのものとは異なります。
メルケル:科学者
ジョンソン:新聞コラムニスト
トランプ:リアリティテレビ番組の「スター」です
メルケルのスピーチはとても感動的です。それは知性と慈善に満ちているからです。日本での首相のスピーチはまったく(国民に)届いていない。日本の不幸に同情してもらいたと思います。

出典:Twitter

なぜ他のリーダは自国だけは大丈夫と楽観していたのかな?
れん

まとめ

要約すると...

  • メルケル首相はコロナ禍のような危機に対する優れたリーダーシップを発揮し、人気取り戻した
  • メルケル首相のスピーチは、現状の厳しさ、施策の目的、国民への要請を自身の経験に基づき簡潔に、感情をこめて余すことなく伝えており、説得力がある
  • 同じ危機に直面している他国のリーダーとの差がはっきりしたとのコメントが多数

国が危機に瀕した時に、状況を正しくとらえ、やるべきことを国民に説得力ある形で、話しかけたメルケル首相のスピーチは数々の修羅場を潜り抜けてきた経験をもとに、国民に心から語り掛けることで、これだけ説得力のあるスピーチになったのだと思えます。

訳していますと、一語、一語に無駄がなく、全体の組み立ても、余すことなく伝えるべきことを網羅しており、これならしっかり国民に届くと感じさせるものでした。

これに比べると、昨今の世界の他のリーダーの質の低下が非常にはっきりしたように思えます。

ひまり
日本にも欲しいリーダーだわ

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