東京オリンピックの年の政治

日本学術会議問題をわかりやすく解説【今さら聞けない】

日本学術会議が推薦した新規会員候補105人中6人が菅首相により任命されなかった問題が大きな波紋を呼んでいます。

なぜこのような事態に至ったのか?過去の経緯を含め、日本学術会議問題をわかりやすく解説してゆきます。

ひまり
新首相初めての難題?

日本学術会議問題をわかりやすく解説

日本学術会議問題をわかりやすく解説するために、そもそも日本学術会議とは何か?これまで、任命に関してどのような経緯があったかを追ってゆきましょう。

日本学術会議とは

政府への政策提言や科学者のネットワークづくりを目的とする内閣府の機関であって、関連法に依れば、日本学術会議は首相の所轄と明記する一方、活動は政府から独立して行うと規定されています。
会員は人文・社会科学、生命科学、理学・工学の分野で優れた業績のある研究者の中から会議が候補者を推薦し、首相が任命することになっています。

定員は210人で、任期は6年となっており、3年ごとに半数が任命されます。
2014年秋2017年秋に続いて今回の2020年秋となったわけです。
2016年夏のように、欠員が生じると補充人事が行われる場合もあります。

新規会員任命に関する経緯

1949年日本学術会議設立以降の新規会員の任命に関する経緯を表にしました。

年月日
首相/日本学術会会長
出来事
1949年
日本学術会議設立
1983年
中曽根康弘
「政府が行うのは形式的任命にすぎない」と国会答弁
1984年5月
会員選出方法を公選制から学会推薦制へ変更
2005年10月
会員選出方法を日本学術会議が自ら選考する方法へ変更
2014年秋
安倍晋三/大西隆会長
官邸に会員候補者名簿提示を求められず(従来通り)
2016年夏
安倍晋三/大西隆会長
補充人事、3ポストにそれぞれ2人ずつ示したところ一部について官邸に難色を示され、欠員になった
2017年3月24日
安倍晋三/大西隆会長
「安全保障技術研究推進制度」に対し、政府による研究への介入が著しいとして懸念を示す声明を発表
2017年秋
安倍晋三/大西隆会長
官邸に求められて、110人超の名簿を杉田和博官房副長官に事前に提示し、105人が任命された
2018年
安倍晋三
首相は任命権者として学術会議に人事を通じて一定の監督権を行使できるとの文書作成(未公表)
2020年8月31日
安倍晋三/山極壽一会長
学術会議は推薦した105人の第25期新規会員推薦名簿提出(事前提出は求められず)
2020年10月1日
菅義偉/梶田隆章会長
新会員の任命が行われたが、学術会議が推薦した105人のうち6人が除外される
2020年10月2日
菅義偉/梶田隆章会長
除外理由を明らかにするようとの「第25期新規会員任命に関する要望書」を菅首相あてに提出

ポイントとなるのは、
・1983年中曽根首相の「任命は形式的である」との国会答弁
・2016年夏の6名の会員補充の際、官邸の難色で欠員が生じた
・2017年秋に、それまでなかった110人超の名簿を官邸に事前に提示し、このうちから105人が任命された件です。

今回は、新規会員の定員どおり、105人を推薦したところ、6名が任命されなかったという訳です。
任命されなかった6名は、すべて人文社会科学分野に属し、共謀罪法案や安全保障法制に批判を行った人が含まれています。

なぜ今回の事態に至ったか?

2017年に、日本学術会議が「安全保障技術研究推進制度」に対し、政府による研究への介入が著しいとして懸念を示す声明を発表したのが1つの契機となっているように思われます。

実際、安倍前首相極めて近いと言われる、自民党の甘利明衆議院議員が2020/8/6に出した国会リポート第410号で、日本学術会議は、防衛省予算を使った研究開発には参加を禁じていながら、中国の「外国人研究者ヘッドハンティングプラン」である「千人計画」には積極的に協力していると批判しています。

これに“「千人計画」には積極的に協力” の根拠は明示されていませんが、2015年9月7日の中国科学技術協会と協力の促進を図ることを目的とした覚書を締結したことを指すとすれば、それはあまりに根拠が薄弱に思われます。

これまでも、日本学術会議は、多くの国の科学技術団体と協力の覚書を結んでいます。
例えば、以下です。
韓国科学技術アカデミーとの協力覚書(2014年)
イスラエル科学・人文アカデミーとの協力覚書(2013年)
ブルガリア科学アカデミーとの協力協定(2012年)
バングラデシュ科学アカデミーとの友好協定(2009年)

(10/15追記)なお、甘利氏は、中国科学技術協会との間で交わされた協力覚書を事実誤認していると批判されたのを受けて、10月12日号で「間接的に協力していることになりはしないか」と改めた。

安倍政権時代の2018年に「首相は任命権者として学術会議に人事を通じて一定の監督権を行使できるとの文書作成(当時未公表)したことや、当時、内閣府から内閣法制局に法解釈の問い合わせがあったこと、2020年9月上旬にも法解釈変更がないか再確認していたことからしますと、安倍前政権やこれを引き継いだ菅政権にとっては、準備してきたスケジュールに従った、既定の行動ということになります。

菅首相の説明(内閣記者会のインタビュー)は、以下のようなものでした。

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こんばんは。 すが義偉事務所からのお知らせです。 すが義偉が総裁選出馬を受けて下記のテレビ番組に出演いたします。 ○令和2年9月4日(金)午後9:30~ ○番組名:テレビ神奈川 NewsLink ※番組内でインタビュー出演 ○令和2年9月4日(金)午後11:00~ ○番組名:テレビ東京 ワールドビジネスサテライト ※番組内でインタビュー出演 ○令和2年9月5日(土)午前8:30~8:50 ○番組名:読売テレビ ウェークアップ!プラス ※生出演 ○令和2年9月6日(日)午前9:00~9:40 ○番組名:NHK 日曜討論 ※生出演 以上お知らせします。 ぜひ、ご覧ください。 すが義偉事務所

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学術会議に年間およそ10億円の予算を充てていることや、会員が公務員になることなどを指摘したうえで、「総合的、ふかん的な活動を確保する観点から(今回の任命についても)判断した」
「法に基づいて、内閣法制局にも確認の上で、学術会議の推薦者の中から、総理大臣として任命しているものであり、個別の人事に関することについてコメントは控えたい」

なぜ6人が?という説明がないとね
れん

日本学術会議の識者の反応

様々な意見を持つ識者の反応を見てゆきましょう。

田中優子法政大総長

「憲法が保障する学問の自由に違反する行為で、全国の大学や研究機関にとって極めて大きな問題だ」

映画人有志」(22人是枝裕和、青山真治、白石和彌、塚本晋也、森達也各氏ら22名の映画監督、脚本家)抗議声明を発表した。

「問題は学問の自由の侵害にとどまらず、表現の自由、言論の自由への明確な挑戦」
「今回の任命除外を放置するなら、政権による表現や言論への介入はさらに露骨になることは明らか。もちろん映画も例外ではない」
「私たちはこの問題を深く憂慮し、怒り、また自分たちの問題と捉え、抗議の声をあげる」

立憲デモクラシーの会」の法学者メンバー5人

「現政権が学問の自由を掘りくずそうとしているのではないかとの強い懸念を与える」

高橋洋一(嘉悦大教授、経済学者)

「推薦を拒否できないという法律論はナンセンス」
「学術会議は一部の貴族のようなもの。引退間際の豪華なポストでお小遣い付きだよな」
「そのうえ、中国の千人計画賛成で防衛省の研究反対、復興増税賛成みたいなおバカな提言をやっている」

田崎史郎(政治ジャーナリスト)

「政府の弱点があって。6名の(拒否)理由を明かせないのが弱いところ。多少、外郭的な理由でも説明してくれれば腑に落ちるんですが」
「学術会議の会長と時の総理は年に1回は会われている。菅さんが思い込んでいるところもあると思うので、最後は2人で話し合うのが一番いいと思います」

橋下徹(弁護士、政治評論家、元大阪府知事)

「学術会議に対する総理の任命は、民主的統制を及ぼすためのもの。ゆえに形式的であってはならず拒否権は当然あり」
「ただし上司部下の関係での人事ではないので拒否の理由を説明しなければならない。学問的理由ではなく審議会メンバーのバランスを考慮したのであれば理由はたつが、菅政権の説明が必要」

広渡清吾(法学者。東京大学名誉教授)

今回の任命拒否が、首相が政権批判をする科学者を排除する隠れた意図をもっているのではないかという疑いを作り出してしまった。

学術会議会員の選考基準は、学術会議法によって「優れた研究又は業績のある科学者」と規定されており、学問的基準が決定的であるので、前記疑いを晴らすために、そのことを根拠づける説明と資料が必要であり、これは首相の説明責任である。

従来と違うだけでは反対も不十分だよね
れん

まとめ

要約すると...

  • 日本学術会議について安倍前内閣以降は「安全保障技術研究推進制度」反対声明などから、その在り方を問題視していた
  • 省庁再編の際に、必要性を含め、在り方について相当の議論が行われ、その結果として、日本学術会議に総合的、ふかん的な活動を求めることになったという菅首相の説明から前内閣から計画的に準備された処置であると推測される
  • 賛否両論あるが、拒否の理由を菅首相が明確に説明する必要があるというのが、識者の多くの声である

恐らく任命拒否の明確な説明がなされることはないでしょう。

今回の件は、コロナ感染対策での感染症や公衆衛生の専門家会議と政治とのぎくしゃくした関係を思い出させます。
専門家をどのように政策決定に生かすのか?

耳の痛い意見を含め、広く専門家の意見を聞いて、自身の責任で最終的に政策を決定するのが政治家の本来の姿ではないのでしょうか?

ひまり
しっかり説明しますの繰り返しで終わるの?

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