安倍総理の突然の病気辞任により、後継を決める自民党の総裁選が9月中旬に行われます。
コロナ禍での政治的空白を生じないためとして、菅官房長官が最有力候補とされています。
安倍政権の継続を重視するとして、緊急登板する菅さんはワンポイントリリーフではという噂がありますが、総理で過去にそのような事例はあったのでしょうか?
戦後5人の総理後継者の中で一番近いのは?
また、菅さんご本人はどのように考えているのでしょうか?

目次
ワンポイントリリーフとは?
ワンポイントリリーフとはどういうことをいうのでしょう?
もともと野球界で、先発投手の降板後、ある打者のみを打ち取る目的で救援投手を起用する戦法として使われてきました。
次の左バッターを討ち取るだけのために、左ピッチャーをあてるなどです。
しかし、野球の世界でも、MLBをはじめ、「ワンポイントリリーフの禁止」に変わりつつあります。
すなわち、「投手は少なくとも打者3人、またはイニング終了まで投げることが義務付けられる。」ということになるようです。
ましてや政治の世界で、とりあえずの急場を凌ぐワンポイントリリーフなどありえるのでしょうか?
政治日程として予定されているのは、自民党総裁として安倍総理の残り任期が切れる2021年9月末日、と2021年10月ごろの衆議院任期満了です。
解散は、この時期までにあり得ますので、勝負を分けるのはこの1年と言ってよさそうです。

ワンポイントリリーフの過去事例は?
過去の総理で、明確にワンポイントリリーフだった例はあるのでしょうか?
就任期間が短い総理としては、在位69日の宇野宗佑総理64日の羽田孜総理が、ありますが、辞任の理由は選挙での敗北や政局で、ワンポイント就任したからというわけではありません。
では、今回のように、総理が病気になり、突然辞任したために、急遽後継が決まったケースを戦後の5つの事例で見てゆきます。
総理大臣 | 辞任理由 | 通算在任期間 | 後継の辞任理由 |
---|---|---|---|
石橋湛山 | 病気 | ||
岸信介 | 1,241日 | 安保闘争 |
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池田勇人 | 病気 | ||
佐藤栄作 | 2,798日 | 円満退陣 |
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大平正芳 | 病死 | ||
鈴木善幸 | 864日 | 日米関係悪化、総裁選不出馬 |
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小渕恵三 | 病気 | ||
森喜朗 | 387日 | 低支持率・えひめ丸事故対応批判 |
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安倍晋三 | 病気 | ||
福田康夫 | 365日 | 参院問責決議・次期総選挙対策 |
岸信介は、石橋湛山の病気辞任を受けて、後継に就任しました。石橋湛山により後継首班に指名されたといわれています。
当時実力者の一角で、安保改定問題で辞任するまで、1,241日の在任期間を数えましたので、とてもワンポイントリリーフとは言えません。
佐藤栄作は、池田勇人の病気辞任を受けて、後継総理に就任しました。実力者による党内調整会談を経て11月9日の池田裁定により後継者に指名されたと言われています。
佐藤栄作も実力者であり、円満退陣まで、2,798日の在籍期間がありましたので、この場合もワンポイントリリーフとは言えないようです。
大平正芳の選挙中の病死という突然の事態に、急遽後継者となったのが、鈴木善幸です。
大平派・田中派の連携の要にあった鈴木善幸が大平政権を継承する形で総理の座に就任しました。
鈴木善幸は総理を目指すのではなく、大平正芳を総理にすることに努力してきた人間であった点や、政権の要職に在り、安倍政権を継承するという意味では、今回の菅官房長官とよく似ている面があります。
もともとダークホースの存在で、就任時にも「もとより私は総裁としての力量に欠けることを十分自覚している。しかし、その選考の本旨に思いを致し、総裁の大役を引き受ける決意をした」と、異例の挨拶を行いました。
しかし、持ち前のバランス感覚や絶妙の人事から全派閥を主流派入りさせ、自民党内で究極の「和の政治」を実現しました。
当初ワンポイントリリーフと思われていたのが、結果として在任期間は864日に及びました。
小渕恵三の病気退任後を引き継いだのが、森喜朗です。後任の選出は、森喜朗も含めた自民党の5人の有力議員が密室で談合して決めたのではないかとの疑惑がささやかれました。
低支持率・えひめ丸事故対応批判などで、387日の在任期間に終わりました。
そして、第1次安倍政権を引きついだのが福田康夫です。
自民党総裁選挙で、麻生太郎と争い、麻生派以外の全派閥の支持を受けて当選しました。
参院問責決議などで、365日の在職期間に終わりました。
したがって、安倍を総理にするため、尽力し、政権での要にあって、政権を継承する形で総理の座に就任するとすれば、鈴木善幸のケースに、大きな派閥や実力者の圧倒的な支持を受けての、就任という意味では、森喜朗や福田康夫に重なります。
ただし、大きな違いは、菅官房長官の場合は、無派閥のため、今後各派閥に目配りしながら、政権運営を行わねばならない点があります。
何か重大な局面に襲われたときに、総理の立場として弱いのではと思えます。

菅官房長官の狙いは?
コロナ禍で、感染と経済の難局にある現在、政治の空白は一時たりとも、許せないため、安倍政権のこれまでの政策の継続性という意味で、最も適任というのが菅官房長官の最大のポイントです。
安倍総理もこれまで、後継者と言ってきた岸田文雄政調会長を、後継総裁に指名せず、一緒に政権運営をやってきた菅さん支持にまわるようです。
菅官房長官は当然、本人からワンポイントリリーフでやりますとは言わないでしょう。
ただし、1年以内に、少なくとも解散総選挙となった場合に、内閣の支持率や総理の信頼性が上がらないままだと、選挙民に人気のある政治家にとって代わられます。
総裁出馬を見送った人気のある河野防衛庁長官などには、菅さんは、ワンポイントリリーフだから、今回は自重するよう説得があったかもしれません。
ワンポイントリリーフと言われながら、長期政権を築いた鈴木善幸の例もあります。
政権運営は、コロナ禍の収束、オリンピック開催の行方、経済の再建などさまざまな難しい問題が絡んできます。
単なる継続でなく、安倍政権末期より、良くなったと国民や自民党員に実感させ、当然長期にわたって政権を担うつもりはあるものと思われます。
ワンポイントリリーフに関するネットの反応





出典:ヤフコメ

まとめ
要約すると...
- ワンポイントリリーフとは次期本格政権までのつなぎの総理就任を意味し、病気での総理辞任後の過去の5事例がある
- 大派閥の支持を受けて就任するという意味では、1年で辞任した森喜朗、福田康夫の例や、ワンポイントと目されて就任しなが長期政権を築いた鈴木善幸の例がある
- 菅さんは、1年後の総裁選で休養充分の安倍さんの再々登場のためのワンポイントリリーフという見方の人が少なからずいる
困難な状況下にあるから政治の継続性が大事だとして安倍政権を引き継いだ菅さんが、本人の思いは別として、ワンポイントリリーフで終わるかどうかは、国民の人気が出て、解散しても選挙に勝てる状況に持っていけるかどうかにかかっています。
問題は山積しており、これらを現状以上に良くしようとするのは並大抵のことではないと思われます。
特に外交分野で、トランプやプーチンと渡り合えるのか懸念はあります。
まずは、内閣をどのように改造して、自らの弱点を補い、各大臣の力を引き出すのか?
相談する仲間も少ない中で、得意の情報網を活用してどう組閣してゆくのか?その手腕を見てみたいと思います。
